コラム:縮小する社会と発想の転換 ~新潟日報の記事から~

By gkmyhn, 2022年3月31日

縮小する社会

上のアイキャッチ画像は、新潟日報で「縮小する社会」として掲載されたものです。既に半世紀以上にわたり人口減少が続いていますが、どの地域も常に真正面から力づくで挑戦して打ち砕かれてきました。過疎脱却と話題になった地域も、今日において減少が止まったという事例は殆どありません。

多くは、人口を動かすには話題となった規模のものを一定の期間にわたり興す必要があるのですが、それが予め計算されていないようでした。目的を達成するために計画を作り、計画は数値に置き換えられ、その数値を達成すれば目的は達成できるのですが、その数値が初めから目的を達成できる規模ではなかったものが多いと診ます。目的のために行う活動は全て必要(必要条件)なものですが、それを達成すると目的も達成できる十分(十分条件)になってはいなかったわけです。必要十分条件となる規模のゴールを決めて、そこから逆算して行動することは、仕事だけではなく日常生活で誰もが行っていますが、人口減少への対応では殆ど聞いたことがありません。

 

「どうなるか」から「どうするか」の考え検証するツール

今回公開する「人口再生シミュレーション」は、人口を推計するツールですが、「活用目的」は、いろいろなアイデア段階のものが果たして目的を達成するに足るものだろうか試行錯誤するツールです。そして、その活動をすれば必ず過疎から脱却できる等、必要で十分な規模予め知ろうとする検証ツールでもあります。集落や市町村の人口が「どうなるか」だけではなく、「どうするか」をシミュレーション中心に探れるツールです。ただ、今日では、それがわかったとしてもハードルが高すぎることが多いでしょう。しかし、今できないものは、後の世代は更に難しくなるでしょう。それで、正面からの正攻法だけでなく様々な切り口からの新たな着手が期待されるわけです。その場合でも、前述のように必要で十分な条件を満たすものでなければなりません。

 

全く変わっていない未来 ~懸念~

長年、人口推計をしている立場でみると、昔から以下のように流れは全く変わっておらず、いつも同じことを繰り返しているだけと映ってしまいます。

  • 今から28年前の1994年に計算して発表した「30年後は4万人に」(ここ)データをみると、最新推計では35年後に40165人との計算で国勢調査5年間分の減少速度を遅らせたものの…
  • 今から18年前の市町村合併の当時に経営指導員の仲間で発表した「70年後には1万人を切る」(ここ)データでは、最新推計でも2075年9419人と変わっていません。
  • 一番の問題と思うことは、今から26年前の1996年に発表した調査研究事業の報告で課題とした「意識はさまざま、力の方向もさまざまで力の結集ができていない」(ここ)は、今なお変わっていないと感じます。

 

人口が減り続ける社会に未来は描けない

内閣府 経済財政諮問会議 専門調査会「選択する未来」委員会では…
〇「ある地域を選び、就労し、結婚して家庭を築き子どもを産み育てることは個々人の意思に基づき、個々人の基本的な権利にかかわるものであり、「人口」を施策として取り上げるに際しては、その点を常に念頭においた姿勢が求められる。
〇人口が減り続ける社会は、いずれ消失することになり、どのような未来も描くことはできない…としています。

 

クリックするとサイトにいきます。

左の”パタパタ画像”は、18年ほど前の佐渡市合併の当時、各画像に人口減少に対する「思いの言葉」を記載して、私のサイトにヒッソリとアップしてあるものです。当時は、佐渡はもちろん、全国でも減少する人口については敏感な時期で、補助団体に勤務していた私は、話題にしないでおこうと避けていました。その後、「消滅可能性都市」が言われ、パタパタ画像で示した可能性はあるんだと思ったものです。

もう一つの「佐渡島カウンダウント時計」(ここ)は、地域づくりや活性化を掲げる場合に、イベント好きだった私も含め、「その活動が自分が楽しむため、関係者のためものだけではなく、次の世代のためでもあるというのであれば、この時計をどれだけ遅らせたり止めたりできるんのですか」と問うためのものでもありました。

私は、この7月7日に後期高齢者となります。もともと、私の行動は「心配性」をモノサシにすると予測できると周囲には言われます。心配性の年寄りという観点からご覧いただくと共に、ツール公開の際には、興味があったり操作ができると思う人に紹介しただき、維持発展は望むのに人口減少対策は行政に任せるということにはせず、このパタパタ画像に記載した言葉のようにならない必要で十分条件となるような、いろいろなアイデアがでるようお願いします。

 

当面の5年間

佐渡島に限れば、今後の5年間は”力づく”で行うに足る材料があります。世界遺産登録、IT企業などの誘致、また新聞紹介された工業会を構成する製造業等は、当初の企業誘致の状況から格段にステージアップした企業群です。人口減少が始まって人口を動かした唯一の勝ち体験ともいえる状況(ここ)に似ています。僅か5年間ほどで観光産業、製造業出荷高は倍増しました。夢よ、もう一度の感があります。

 

3 Comments

  1. 野口忍 より:

    ありがとうございました。令和3年度の佐渡市で生まれた子供が200人を割ったとか。両津商工会の会員企業も従業員の高齢化に少しずつ問題意識を持ち始めている方もいます。やはりUターンの強化位が即効性の対策でしょうか?

    • gkmyhn より:

      ■最初に、私を人口の専門家とは思わないでほしいので前置きします。一言すれば「人口オタク」だというだけです。(笑い)
      今から36年前に推計手法を習い、今みたいなエクセルはないので、PC98パソコンを使いベーシック言語でプログラムを書いて動かしていました。最初に手書きで計算しておき、プログラムを数行書いては動かして思う結果になるか照合していく作業でした。きっと1万行以上書いたので、いつの間にか人口が中々動かないことや動き出す感じがわかってきました。この途上で、なぜそうなるのかわからないことが多く、その都度調べたもので、体系的な知識ではありません。

      —-
      ■人口は長期戦略で、20年後の人口は今の女性数で大方は決まります。
      ヒトという生物は20年間ほど経つと再生産年齢になり、ほぼ40歳位までに産み上げます。昭和40年以来、この世代交代のたびに女性数は半減(②世代交代で半数になる女性数)してきました。世代交代するごとに半数の女性で産むのですから出生率を幾ら伸ばしても間に合わない状況になります。

      このように説明はできても、現実はそうはいきませんよね。それで短期決戦しようとすることになります。佐渡市に限っていえば、他市町村よりも一歩進んでいるというか、少なくとも今までとは違うと思っています。今までは「人口はこうなるが頑張る」という説明的でしたが、今回のものは「この目標人口は確保しなければならない」との意気込みがわかります。それは、若年女性の転入を毎年20人、40人、60人と増加をしていく…部分などです。通常ならば、「女性は産む機械ではない」と言われそうなことも手段として記載しているためです。目標達成できないときに何とか増やすにはどうするかと悩む気持ちが出ているかな..と。

      しかし、私には新潟日報の「利用者の減少が止まらず苦境にある公共交通機関の問題もこれとどこか似て映る」と重なり、企業だとそうなってからでは遅い、それができるなら最初からこうならなかった...と思ってしまうのです。それが、今回の記事記載の契機となりました。

      ただ、この5年間の佐渡は、上記の「当面の5年間」記載したように挑戦すべきと思っています。観光と企業誘致で人口の流れを変えた前回は、観光倍増の背景に「離島ブーム」がありました。今は移住が多いようで素晴らしい努力もしているのでしょう。もし、5年後まくいかなかったという結論になれば、「消滅しない古里」にも考慮していただき、私の提案している上記の「デモ版の『一括3』シート」の考えも考えてほしいと思っています。

    • gkmyhn より:

      「出生数が200人を割った」に‎興味があったので別記事を次にアップしました。御覧ください。

      「出生数が200人を割る!  ~それは20年前に決まっていた?~

What do you think?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です