国の懸念から既に5年経過。佐渡島の経営の状況、問題点、課題、そしてチャンスを新年にあたり今一度整理します。

By gkmyhn, 2022年1月18日

国の懸念

全企業の87%を占める小規模企業は、今後本格化する最大問題である人口減少をはじめ厳しい経営環境に直面しております。その様相は、上のアイキャッチ画像のように下り坂のエスカレーターを駆け上がるに似ています。この中では事業を継続していくのは難しいとして、「哲学が変わった」といわれるほど新たな考えを導入して中小企業政策を大転換、経済産業省では半世紀ぶりとなる基本法(小規模基本法)を平成26年6月27日に成立させ数々の施策を展開しています。

また、小規模企業を含め全企業の99%以上を占める中小企業は、高齢社長が多い中で事業承継は進まず、このまま放置すると、2025年には全企業の三分の一ほどの120万社以上が廃業となり、650万人の雇用が失われる恐れがあるとしています。このため、「もう待てない」として施策をつくり”気づきから始める”プッシュ型支援を行っています。

詳しくは(こちら)をクリック ※資料出所: プラン策定事業(相川町商工会2019)

佐渡島での検証

では、国が心配するような「政策を大転換までしないと企業継続が難しい経営」「事業承継できず三分の一にも及ぶ廃業と雇用者の離職」が事業現場である佐渡島で起きているのでしょうか。検証してみましょう。

なお、検証に使った資料は、佐渡連合商工会が前述の国の懸念を基に、国と同じアンケートを商工会員に対して2015年に行い公表しているものです。

 

1 経営環境としての人口減少の状況

別記事「国勢調査からみた5年間の変化と投影した将来の佐渡。どう流れは変わったか? (データ編)」で記載のように国の懸念以上のスピードで人口減少が進んでいます。

2 売上の状況

売上高のピークの質問への回答では、いわゆるバブル崩壊の前後が多い状況でした。

現在(2015年の調査時点)ではピーク売上高のどれ位かの質問については、5割以下が50%弱、6割台を入れると60%弱となっています。

以上の売上減少の大きな原因の一つが、大多数の事業者の販売先が島内であることがわかります。人口減少が売上減少と直結しています。国の売り上げ回復への懸念が佐渡島でも心配されることがわかりました。

3 事業承継の状況

後継者についての質問です。後継者が「いない」「あまり期待できない」の合計は51.6%です。ここでも、国は全国平均を知り「大変だ」と判断したのですから、佐渡島においては更に深刻に考えるべきと言えます。

 

以上から、国が懸念する「人口減少による需要減」「高齢経営者の事業承継が進んでいない」ことが佐渡島の企業にもあることがわかります。そこで、「国の言う懸念はあるが表面化していない」という仮説のもとで、その場合の「問題点と課題、事業機会と挑戦」について記載します。

問題点と課題、事業機会と挑戦

1 今後の人口、事業者数、働き手の人数 ~背景~

国では、人口千人当たりの小規模事業者数は一定としています。

佐渡においては、事業所数全体でも昭和50年以降、人口千人当たり70±3で相関していることがわかりました。これで、将来の人口がわかれば事業所数もわかります。

 

10年後の事業所数

今後10年間の予測をしたのが次の図表です。人口が40165人に減少、それに伴って平成2年4081事業所は許容数2863事業所となり、差1218事業所がオーバーとなります。また、働き手を20-64歳と仮にした場合、働き手が不足する状況も示されています。※国の政策転換、佐渡島での調査は、いずれも2015年前後となっているため、以降も基点は同様にして記載します。

2 問題点

次の表は、既に紹介した佐渡連合商工会が行った調査から高齢経営者を抽出、母体となる佐渡島の全事業者を類推したものです。調査時点から5年間は経過しており、当時70歳以上の経営者は5年以内、60代の経営者も10年以内には廃業の恐れがあります。問題は、コロナ禍でもあり一挙に廃業がおきる可能性があることです。その場合には、表中にあるように一社平均6.3人の雇用ですので全体で数千人の雇用が一挙に失われることになります。生産労働人口不足は一転して働きたくとも働けない失業者増加となります。※生産年齢人口と上表の20-64歳人口に差異がありますので読み取る場合に注意ください。

なお、人口減に伴う許容事業所数の減少数は、今後の廃業数と似ており過当競争などなく解決できる可能性はあるでしょう。簡単には廃業できない事業の方もいるでしょうから、ソフトランディングできる支援が必要となると思います。

3 課題

(1)一挙に廃業が進ませないための対応

次表の廃業数をみると、これまでは急激な廃業はなく、むしろ少ない状況となっています。国は当初、2020年頃までに全事業者の三分の一程度の廃業の可能性も示唆していました。現場となる佐渡島では、そのようにはなっていないようです。しかし、5年前の調査時点で70歳以上の経営者の事業所だけで「廃業やむなし」が400-500事業所あり、一社平均6.3人と多くの雇用が失われます。産業政策では生産年齢人口の確保が中心ですが、世代交代できていない佐渡島では、廃業が進むことも想定することが必要と思います。

(2)継続できる経営に向けての再構築

次の表は、10年後の許容事業所数になる状況を数値に置き換えたものです。継続できる事業所として国が求めているのは、人口減少の中での新たな需要開拓をしての継続できることであり、そのためには今の努力の延長でもっと頑張れと言っているのではなく経営の再構築をしようということです。その視点で、事業者や支援機関に行ってほしいことを佐渡島の事業者側の課題から全体として数値化したのが次の表でもあります。各々の支援機関などの立場での目標数値はありますが、佐渡島全体として必要なことを数値化で示されたのは、一考察に過ぎませんが初めてのことと思います。

(3)市場の寡占化への対応

島内の生活者をターゲットすることが多い佐渡市場では、どこかが売り上げをあげれば他では減少するというゼロサム市場になっています。

その一つとして小売市場を例に説明します。次の表は、佐渡島の消費者が何処で買い物をしているかをしたものです。ここでは、脚注に記載したように少し工夫をして金額でも計算して示してみました。金額でみることは余りないと思います。どれだけ当たっているか否かは正確にはわかりませんが。しかし、佐渡島は離島のため生活圏と経済圏が同一に近いため、小売店が販売したという調査金額と生活者が買ったという調査結果は、島外地域に比較すれば合致します。郊外店などに集中している様子がわかります。。

この結果が、どのような競争の中で出てきたかを示したのが次のグラフです。平成16年と平成28年を比較しています。赤の円の内側の地域の店から外側の店へ移動したことを示しています。前述のとおりゼロサム市場ですから、赤の円の内側が減った面積と、外側で増えた面積は同じとなります。この統計の平成28年では、消費者の買物地区利用割合は、商店街2割、郊外店6割、新潟など数%余り、ネットなど10%余りです。多くの店がある商店街から幾つかの強い店がある郊外店へ買物が集中していることがわかります。今後も強いところは更に強くなることは競争の中ではあることですが、社会政策としては「店や事業者は近くあってほしい」と思います。

 

4 事業機会そして多様な業態づくりへの挑戦

(1)佐渡市の消費者の品目別消費支出金額

これまでに記載したように、一挙に世代交代がおきてもおかしくない佐渡島になりました。廃業が絡む新陳代謝の過程は、生活者の購買行動が新たになるときであり、自店を利用してもらえる事業機会でもあります。誰に何を、どのようなメニューの揃え方、訴求の仕方、提供の仕方でアプローチするか。それを考えてみる資料の一つとして、小売り業、サービス業の品目別一人当たり消費支出を佐渡に置き換えて一覧にしました。約600品目ほどありますが、簡単に集計したりシミュレーションできるようになっています。活用ください。 ※資料出所: 家計調査h27

●品目別消費支出のエクセル資料は(ここ)からダウンロドしてください。

 

(2)佐渡の集落別、男女別、年齢別人口

次の資料は、佐渡島内の集落地区(旧・大字)毎の人口(男女別、年齢別)です。前項の「何を」に対して、「誰に」提供するかの資料となります。

国の求めるものは、何処にいる誰々の、このようなニーズ特性のある人に、自店の特長を活かして、このような方法で、このような商品やサービスを提供してく…が持続的発展(国の語句)のために必要であり、最初から今一度始めてみてほしいとしています。このための施策として国の「持続化補助金」「ものづくり補助金」の申請のお手伝いを相当数しました。当初、新たな切り口やニーズ、革新的サービスなどは中々ないと思っていましたが、その最初の段階で「切り込む種が、この事業所にはない」と諦めたのはありませんでした。やろうと思えば、どんな事業所でも次のステージに行けるシーズはあるんだとビックリした自分がいました。

佐渡島内からの売上を主力にしている限り、このエクセル資料の中にしかお客様はいないことになります。趣味で事業を行う場合は別として、一定の売上高が必要な場合、距離だけでなく通勤途上でもよいですが、常に来てもらえる範囲の人から半分以上の売上高を確保できると楽になります。人口減少の佐渡では、不特定の対象者に力づくでチラシなどだけでPRして顧客となっていただくことは難しくなっていくと考えます。この資料をダウンロードして眺める習慣がつくと、困ることに気づいたり、この資料とは別の視点に気づいたりと、自分がしたいことではなく生活者が必要なこと側の視点で一層考える習慣がつくと思っています。

 

●集落別、男女別、年齢別人口のエクセル資料は(ここ)からダウンロードしてください。

 

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