※調査数値の資料出所は、断りのない限り佐渡連合商工会がh27に商工会員に対して行った調査報告書を活用させていただいています。
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父: おっ…すごい!
娘: 何がどうしたの?
父: 佐渡市が「総合計画」の パフリックコメントを募集しているよ。目標値に商工会員数となっているのがあるんだ。
娘: 次の図表ね。確かにある。でも商工会の会員数が佐渡市の目標値になるのかなあ?
父: きっと、そう思う人もあるね。でも背景を話せばピッタリだと思ってもらえると思うよ。今までにないこと、認めてもらった感じで嬉しいね。
娘: お父さんと話していると、良いときも悪いときも商工会の応援団だものね。なぜピッタリなの?
父: そうだね。まず、商工会の指導事業は、対象者が佐渡全島の事業者の87.9%(h27.6)を占めている小規模の事業者だよ。その経営改善や維持発展そのものを目的としていて、国が定めた地域の唯一の組織なんだ。国の中小企業予算のうちの小規模企業施策は商工会を通して行っていると言っても過言ではないよ。
娘: えっ! 商工会のイメージって、祭り、商店街、売り出しだよね。
父: それは、相談指導の内容が秘密だから役員さんも含めて誰も知らないからだよ。表には出ない分野だからね。
娘: なるほど。その事業者に大変なことが起きている、起きようとしていると国が言っている訳ね。国とは各地域をくくったものだから、現場となるのは佐渡島だものね。
父: そう。そのへんは別記事「国の懸念から既に5年経過。佐渡島の経営の状況、問題点、課題、そしてチャンスを新年にあたり今一度整理します。」に書いてあるとおりだよ。
娘: じゃあ、国は商工会には何をさせようとしているの?
父: 下の図をみてよ。その要旨がわかるから。 ※資料出所: 相川町商工会 事業者と商工会の将来像策定プロジェクトから抜粋
(クリックすると拡大します)
娘: なるほど。まず、国は自らの思い、そして地域の事業に必要なことを可能にするために法律を変えたんだね。
父: そう、そして「経営発達支援計画」の作成を求めた。後で述べるけれど、「それは無茶ではないの」という位の厳しいレベルだね。
娘: なるほど。
父: 次の段階として、その経営発達支援計画については市町村の総合計画と連動性・整合性を求めると共に、市町村との共同作成を申請の条件としたんだ。
娘: とにかく実効性をもつものにしたい...ということね。期待されているんだね。
父: 頑張ってほしいね。 参考に、中小企業白書にある「経営指導員の育成を通じて、会員数増加及び組織率向上に成功した商工会連合会」を紹介しておくよ。
娘: 組織が縮小すれば、産業を担う事業者の大幅減少ひいては雇用の縮小につながる懸念があるわけね。その内容の一つ一つではなくて、会員数という結果を「成果指標」にしたんだね。きっと。
父: ここで、 歴史上、最も分厚いので「立つ白書」と言われている2014年版の中小企業白書のことを説明させてよ。ここから今に通じる展開が始まったんだ。
娘: 上のアイキャッチ画像のことだよね。よくわからないけれど何か訳があるの?
父: この年の6月に「小規模基本法」が制定されたよ。経済産業省が半世紀ぶりにつくった「基本法」で、中小企業政策の大転換といわれるものなんだ。
娘: どこがどうなの?
父: 一言でいえば、それまでは「大企業も一人から始まった」みたいに成長って規模拡大とも言えたよ。そこに「持続的発展」という概念を入れたんだ。
娘: 何だかわからない?
父: ほら、よく行く店があるよね。
娘: うん、おばあちゃんがやっている店だけれど、話すと和やむし、友達への慶弔などシキタリのやり方も教えてくれるし...。嬉しいのは、いっぱい買うと値引きしてくれるんだけれど、そのやり方が、通常どおり払ったら、突然「ハイッ 100円」といって値引額を渡してくれるんだ。それが何だか得したようで嬉しい。
父: そう、長年しているとお客様が喜ぶやり方とかうまくなるし、確か何十年もお手伝いにきている店員のおばあちゃんがいるよね。雇用の維持、そのようなことを含めて言う言葉なんだと思うよ。
娘: それで白書の内容はどうなの?
父: それは、(ここ)をクリックして白書の「編集後記」を読めばわかるよ。
娘: 編集後記を読む白書なんてあるのかなぁ…
父: その結果として、白書の「はじめに」に相当する部分で、当時の茂木経済産業大臣は、「小規模基本法は、中小企業政策の新たな時代の到来を告げる『号砲』であり、中小企業白書は今後の中小企業政策の『羅針盤』ともいえる内容になっている」と言っているよ。
娘: わかった。じゃあ読んでみる!
父: この小規模基本法の制定以来、当時の安倍首相は、必ず「中小企業及び小規模企業の皆様...」など並列するように言っていたね。
娘: 確かに、編集後記を読むだけで、なぜ分厚くなったかわかった気になるね。
父: 実は、編集後記を書いた調査室長さんには会ったことがあるよ。
娘: へえ~ どうして会えたの?
父: この方は、編集後記で触れていた「地域産業構造分析システム」(リーサス)を展開普及させる担当にもなったんだね。佐渡が、そのモデルになったんだよ。
娘: それで来島したときに会ったんだね。
父: そう。2014年白書は印象深かったから嬉しかったよ。
娘: どんな?
父: 一つ目は、佐渡連合商工会から頼まれた「調査」の項目を考えていたとき白書が発行されたんだ。政策の大転換が必要な大それた背景が佐渡島の事業者に起きているのかなあ?...と思ったので、同じ調査項目を提案させてもらったよ。
娘: ほかには?
父: 二つ目は、最大の問題と指摘する人口減少の部分で、「仮に合計特殊出生率が上昇したとしても、直ちに人口減少が止まることはない」「合計特殊出生率を上げれば、人口減少の流れを止められるとの誤った認識が一部ではなされているようであるが….」など、実際に計算にあたってない人では言えないような強い言葉、ここまで白書で言うかという文章が印象的だったことだよ。
娘: 会って、どうだった?
父: 編集後記から受ける印象そのものだったよ。自分たちのチームで手掛けつくった過程の熱意、そこからの自信が溢れていた。その後、退職されたとも聞き、国でも優秀な方は途が広いんだと思ったね。
娘: なるほど。
父: それで身近に感じて「リーサス」に応募したよ。
娘: 何それっ?
父: リーサスは、誰でも活性化を提案できることを目指し、小学生でも奥さんでも気軽に活用して経済活性化の新しいキッカケを見つけてほしいため、活用についての構想などを募集しているんだ。佐渡市はリーサス活用のモデル地区にもなった位だから、もっと活用するといいね。また、平成19年には、地方自治研究機構に委託して、全国でも先駆けていると言ってもよい産業連関表を作成しているんだから…
娘: それで応募の結果はどうだったの?
父: 棒にも箸にもかからなかったよ。まあ言い訳すると、リーサス活用というよりも言いたいことをリーサスに触れて言っただけだから無理ないと諦めた。
娘: まあ、言いたいことをまとめられたんだから、それでよしとしないとね。行政だけに任せることなく、いろいろな視点から人口対策の提案をねらうお父さんが公開しようとしているツールと同じだものね。
父: うん。それと佐渡市の審議会の一つの議事録を見ていたら、リーサスや産業連関表についての言及があったよ。同じようなことに興味をもつ方もいるんだと思い、応募原稿「人口の減少で産業が縮小した佐渡! 今度は産業力で人口の再生をねらおう!」にリンクをつけておくよ。
娘: このタイトルが今日の本題なの?
父: そうだけれど、まだ知っておいてほしいことが他に少しあるよ。この白書でショックだったことがあるんだ。
娘: 何なの?
父: 白書を読むと支援機関として「よろず支援」を設ける予定があるとし、商工会はに高い目標を課して、クリアするように求めてきたんだ。
娘: 前に話のあった「経営発達支援計画」づくりね。
父: そうだね。全国の市には商工会議所、町村には商工会が身近な指導機関としてあるんだよ。そこに必要な専門家を容易に派遣する策でいいのではないか、もしかしたら「あなた達は駄目だから他に支援機関を設置する」ということかなと思い、否定されたような気になったよ。
娘: 確かに! 商工会の応援団としては少しショックだね。でも、意味が違うんでしょ。それにそんなに高い目標なの?
父: うん。地域の事業者への経営発達支援計画の作成のことなんだけれど、確か、何人かの審査員がいて20数項目の審査項目があって、各々の審査員毎に各項目とも満点がとれるまで何度でも挑戦する…ようだった気がするよ。
娘: それは高すぎる気がする。でも期待値というか役割の大切さもわかるよ。
父: 白書には、こうも書いてあるよ。「小規模企業振興基本法案は、『事業の持続的な発展』を目指す小規模事業者の支援を目的としているが、市町村などの支援の現場における中核機能は、まさに商工会・商工会議所が果たしていくべき役割といえる」..と
娘: なるほど、やはり商工会には期待しているんだね。救いの言葉!
父: こんな経緯があった後、佐渡市の総合計画の「成果目標」の一つに商工会の会員数があるのをみたんだ。それで、佐渡市も商工会も国が懸念し佐渡島の事業者に起きようとしていることの対応に向け、新しいスタートを切ったのかもしれないと思ったんだ。
娘: NICO(ニコ)って?
父: 正式名称は、公益財団法人 にいがた産業創造機構で、名前のとおり新しい展開に必要なメニューが揃っていて、そのための人材育成や専門家派遣、そして資金支援まで総合的に行う組織だね。
娘: それを佐渡に欲しいってことなの? そんなこと実現できるの?
父: いやいや、NICOにある機能は程度の差はあれ佐渡の支援機関を通してもできると思うよ。ほしいのは会社みたいに、社長の基で必要で十分なことを決める仕組みだよ。佐渡にある支援機関の機能面を統合して、先々の見通し、分析をして計画、実施、差異分析できるNICOみたいになること。
娘: そうか、だから佐渡版「NICO」なんだね。
父: 例えばだよ。家計が大変だから家族に協力を願ったとする。各々が、こづかいは幾ら減らしていいよとか、電気は小まめに消すよとか、日曜日はアルバイトするとか、アーダコーダとい言ってくれたとするよ。じゃあ、それで家計の危機は無くなると思う?
娘: 今よりは楽になることはわかる。でも、最初に不足するお金をハッキリしてくれないと解決するか否かはわからないよ。そうか、わかった! 家計を助けるとして、私がこづかいを5千円減らす目標をつくり、お母さんが電気を消す当番になり365日チェックの目標をつくり、お父さんがアルバイトで2万円の収入を得る目標を作るとするよ。全てが目標どおり達成しても、家計が幾ら不足するかを明らかにしていないから、行うことは必要だけれど、達成しても十分な金額になるかは不明...ということだね。
父: そうだね。今は頑張らなくてもよいのは、お前たち子供たちが成人になったから支出が少なくなったからなんだ。じゃあ、佐渡島は毎年1000人位の人口減少があり、年々稼ぐお金は少なくてよいのに、増やそう増やそうだけで、そんなことを検討した話は聞いたこともないよ。
娘: 何かわからないけれど、少しわかる気もするよ。
父: そうだね。話を戻すと各支援機関は、できる目標、したい目標を数値に数々の経営支援をしているよ。じゃあ、その目標数値をすべて達成したら、果たして佐渡の企業は持続可能な会社になるのか、変化が必要な事業所数に対して行っているのか、その時の働き手を雇える規模になるのかということはわからないよね。そこまで考えなくてもいいものね。でも佐渡島としては、それを考える場が必要ではないかなと思うんだ。
娘: そうだね。頑張れば今よりも悪くならないし良くなる可能性はあるとはいえるけれどね。NICOが新潟県全体を考え計画と数値目標があるように、佐渡全体でも必要だということを言いたいのね。
父: うん、「総合計画」を達成するための「成果目標」数値は、きっとポイントなる重要な要素を評価するものだと思うよ。上の家計の例の数値目標とは異質なものだと思うよ。どうなったかの差異分析は、「家計」の例で示した数値に対して行うことが通常だと思う。
娘: そのためには、NICOのように必要な計画、必要で十分な数値目標を考える機関がほしい…だね。
父: そうなんだ。 次の画像は、市町村合併の際、商工会も広域連携をして佐渡の産業を丸ごと支援できる組織にしようと、検討して全島に出したチラシの一部分だよ。佐渡版「NICO」は、この「佐渡の産業丸ごと支援」のイメージともいえる。
父: いやいや、これは会員非会員問わず誰もが、創業に必要なことに始まり、経営を続けていくに必要なこと、廃業していくに必要なことを、どこの商工会からでも、相談できますよ...という意味だよ。
娘: なるほど。今後は、佐渡島に必要な産業づくりについて、NICOのように一体的に考えたいということね。各支援機関が全て必要な目標を達成しても、それを足しても佐渡として十分な数値にはならない可能性がある。初めから示されていないことは、先の家計の例でわかるよ。
父: これまでに似た組織はあったよ。「佐渡市創業支援ネットワーク」といって、殆どの支援機関が入っていた。でも中心は、お互いが一層支援をしやすくなるための戦術面の連携だったね。これからほしいのは、必要で十分な佐渡の将来の産業はどれ位なのか、どのように確保していくのかなどの戦略が必要だと思う。そのイメージとが佐渡版「NICO」なんだ。
娘: 少しわかった気がする。
父: このまえ、市議会の質疑応答をみたよ。
娘: 注目したことがあった?
父: 事業者は経営の再構築が必要になっているが、何をすれば何から始めればよいかわからないという事業者。きめ細かく支援する対応の必要性があるのではないかとの主旨の質問してたよ。
娘: 市長さんはどう話したの?
父: 商工会の支援分野だと思うが、行政としては、その根底の部分は自分で考えないと後の事業継続も難しい...との主旨を言っていた。
娘: それはそうだよね。何百何千とある事業者へ手を差し伸べ伴走することは難しいものね。
父: 商工会に相談とも言ったが、商工会も今何かすべきかなどの最も基本部分は、まず自分で…と思うかもしれない...と感じているよ。
娘: そうだね。商工会も合併で人数が少なくなるんでしょ!
父: でも佐渡の事業者は相談にくるのを待っても来ないよ。自己責任だから、それでよいのだけれど、半数近くの市業者が後継者ない状況もあるから公の課題でもあると思うよ。
娘: 後継者がいて事業を継いでも、今までのやり方で後継者が子育てや生活ができる稼ぎができるかと思うと、やつぱり経営を根本から見直さないと危険だと思う。
父: そうなんだ。「NICOカフェ」という月一度、佐渡へ来ての出張の相談事業があったよ。でも相談がなく中止も多いし来ても僅か。一方で、よろず支援は当時月50件となっていた。
娘: プッシュ型、悪く言えばお父さんの押しかけだものね(笑い)
父: それだけでなく、今後10年間で1000以上の事業者がなくなるし、後継者がない高齢事業者が一挙に廃業すれば、働く場が急減する可能性も出てくる。
娘: それは佐渡全体の問題と言いたいんだね。
父: うん、それと経済産業省の考えに「今、事業者におきている課題を、支援者は我が身の課題として対応する」とあったよ。また、佐渡の事業者の7割は経営の困りごとや不安があるという調査もある。
娘: わかったわ。国が求めるのは「子どもに対する親の気持ち」と似ているから、親ならば子どもが相談に来てもらうのを待ちながらも、心配で待ちきれず行くことも必要...ということなんでしょ!
父: そうだよね。それに、どの事業所も事業再構築、新しいビジネスモデルへのチャンスもあるんだよ。
娘: どういうこと、佐渡にもチャンスは多いの?
父: よろず支援のコーディネーターの時代には事業計画をつくることは多かったんけれど、その中で補助金申請に関係するものが5年間だけれど70件余りあったよ。
娘: だから?
父: 今の補助金は、各々の事業所が新しいビジネスモデルをつくってほしい…が背景にあるものが多いよ。このため、「もっと頑張ります」…だけの計画では採択されることが難しいんだ。
娘: そうなんだね。
父: その申請の事業計画づくりで、事業者の方と新たな展開を一緒に考えることが一番時間もかから難しいんだけれど、結果として断念したのは2、3件だったと思うよ。
娘: なるほど、佐渡でも新たな展開方法はあるんだね。
父: そうなんだ。でも事業者の一番身近な支援組織としての商工会も、人手は更に少なくなるね。その中で、先々を考えて新たな展開をしようと提案して、同時に手を差し伸べて手間暇かけて伴走型の支援をすることは難しい..かもしれないと思うよ。
娘: それで何を提案したいの?
父: 商工会や金融機関などを定年退職した人を活用させてもらうのはどうかな...と?
娘: 専門家でなくてよいの?
父: それは、最後の方で記載した「よろず支援の佐渡担当コーディネーター時代の仮説と検証 ~佐渡版『NICO』への活用~」で検証したように大丈夫だと思うよ。行政が関与する専門家は、島外市場をねらい競合が厳しい、佐渡を背負って立つ企業への支援でよいと思うよ。
娘: ずいぶん商工会の経営指導員への自信があるんだね。
父: 先の 補助金の主なものは、持続化補助金、雇用拡充機会補助金、ものづくり補助金だけれど、事業計画づくりのポイントとなる、対象市場、対象顧客、顧客のニーズ特性、販売促進策で、迷ったときに決断できた多くは経営指導員の言葉だったよ。
娘: そうなの?
父: きっと経営指導員本人も気づいてない部分もあるんけれど、圧倒的に各事業者の経営のやり方と結果としての決算書を誰よりも多くみているから感覚的に身についているんだと思うよ。
娘: そうか、金融機関の方であれば、もっと厳しい視点で経営を診ているよね。きっと!
父: 来月には後期高齢者になるよ。何事を行うにも気力も面倒さも耐えられなくなってきた。でも、65歳定年の年齢であれば、後は勤めないという人なら意欲もあり、ボランティアを含む謝礼価格での登録でもいいと思うよ。
娘: それは勝手にはきめられないよ。
父: そうだね。ただ対象は千単位の事業者の数なんだ。誰か一人二人に頼むということではなく、多くの「おせっかい」的に行える人が必要と思うね。
娘: まあ、それも一つの意見だね。何人も登録してもらい自分の知っている事業者が対象とするのでよく、バックに専門家や支援機関がいるなら仲介役でもあるし気持ち的にも楽だもんね。
父: 次の表は、調査から経営者の「経営方針」と、「後継者の状況」を抜き出してクロス集計したものだよ。
娘: え~と、今後の経営方針を経営者がやりたいことのニーズとみて、それを基に支援機関は後継者の状況から支援策を考える…とみればいいんだね。
父: そう、先の佐渡版「NICO」が今後の佐渡全体として行うべき目安を数値化したものだよ。前に言った「家計」例の「過不足金額」を数値で明らかにすることに相当するものだね。これをクリアすれば、必要で十分な過不足ない家計になる….というものだよ。
娘: え~と、佐渡市も含めた支援機関が、各々の立場でも目標を立てクリアしても、佐渡全体に必要な支援メニューの各数値をクリアできるか否かはわからない…だよね。
父: おおっ! わかってきてくれて嬉しい。
娘: そして、総合計画でいう「成果目標」数値とは違うということね。また、語句にある「再構築」は、前に述べた「持続的発展」、佐渡市の成果目標では「安定化」に相当するものだね。
父: 全体数値は別記事でも書いたよ。その時の表は、「何をしたいか」という経営方針だけで「再構築」とか「ソフトランディング」とかの支援策数値に結びつけてある。ここでは「後継者の状況」を加味したクロス集計したものにもとづいているという違いがあるね。
娘: 別記事の表は少し数値が異なるところがあるけれど、それは端数調整の問題だね。
父: また、別記事の表は、「自分の代で廃業することもやむを得ない」と回答すると「廃業予定者」と数えているが、若い経営者だった場合には即廃業とは言えないよね。
娘: だから、それで60代経営者と70歳以上経営者を抜き出した二つの表を作成したんだね。
父: 年齢は、対応の優先順位ともいえるね。特に、70歳以上の経営者は既に5歳上になっている。この経営者の方々が、「後継者がいない」「自分の代で廃業やむなし」とすれば廃業の可能性が大きいとみて「ソフトランディンク」の支援対象とする...とみるんだ。
娘: ただ、商工会って合併するんでしょう。新しい商工会毎に目標数値がわからないと意味ないんじゃないの?
父: そうだね。ここでは、個々の組織が「やれる目標値、やりたい目標値」だけでなく、全体として「必要な目標値」も考慮してほしいという気持ちから例示したものだよ。もちろん、やろうと思えば、例えば「商工会の満足度が低い」人は、他の項目でどう回答しているかなどクロス分析ができるようにはなっている。ちなみに、この回答者の方々は、他の回答者に比較すると経営課題があり、経営の再構築などの要望をもっている人たちだったよ。
娘: ただ、5年前の調査だから新しい目標つくるには新しい調査は必要だよね。
父: うん。国は、5年前の白書に記載したメニューを次々と達成してきたことがわかったよ。佐渡も新しいスタートを切るようだから、この調査書も役割を終えて、新しい目標に対する調査を必要ならばすればよい思う。
娘: 言いたいことは、わかったわ。
ゴールからの逆算方式の一例として、私がリーサススへ応募した「人口の減少で産業が縮小した佐渡! 今度は産業力で人口の再生をねらおう!」を提示されて思います。
娘: 「よろず支援」って、お父さんが佐渡のコーディネーターを頼まれていた組織だよね。
父: うん。中小企業白書で都道府県毎に設置する予定と記載した新しい支援組織だよ。はじめは商工会のライバルと思ったし、中小企業診断士といってもペーパードライバーならぬペーパー診断士だし、他の方はプロの方々だったから迷ったよ。
娘: そうだね。せいぜい「セミプロ」かどうか…だね。それなのにどうして受けたの?
父: 一つは、たまたま佐渡連合商工会から調査を頼まれた途上で中小企業白書が出てきてこと。国と同じ調査項目で調査をして、国が懸念するようなことが佐渡島にあるのか知ろうと提案したんだ。そのために、何度も読み返してみて全国で起きようとしていること、そのために対応しようとしていることがわかった。編集後記まで読んだため行おうとしていることへの熱意がわかり、たまたま白書を書いたチームの方に出会いもあったことかな。 また就任への最終決断は、調査の集計途上で次の図表の困りごとや不安がわかったことだよ。
娘: なるほど7割方の経営者が「困りごと」や「不安」を抱えているんだね。
父: この割合を佐渡全体に置き換えると1000以上の事業者になる。その相談相手は、家族、親族、友達、同業者などが多いことがわかったんだ。白書が求めているのは、どの事業者も新たなビジネスモデルづくりが必要という内容と感じた。だから今の相談先の人達とは役割分担はできると感じたよ。自分の居場所と役割はつくれるな...と考えたんだ。
娘: なるほど、経営のプロとして 要請してきたNICOの意図とは違うお父さんらしい決め方だね。
父: まず、次のグラフを見てよ。よろず支援として行った自分の年間650件ほどの相談割合だよ。殆どが商工会や金融機関からの案件だったと思う。(資料出所: よろず支援)
娘: 売上拡大や創業などが多いね。セミプロなのにできたの?
父: なにしろ、バックに10人以上の専門家がいるからね。 ほかの先生方に迷惑をかけながら何とかこなしている…感じだったよ。
娘: わからなくともできるんだね。
父: 商工会での現役時代、税務、金融、労働、法律、情報などの相談メニューは、その分野の専門家や機関が別にいるよ。だから、専門家と比較され弱者になってしまうんだ。商工会は、本当は「税務相談ができるハローワークで」「雇用などの相談ができる金融機関で」「融資相談ができる労働基準監督署で」「帳面や決算を教えてもらえる社会保険事務所」なんだと思うよ。
娘: 確かに、そんなことが何役もできる機関ってないものね。それで仲介者としてはできたんだね。目論見どおりだったね。
父: 現役の経営指導員だった頃は、月50件で年間600件位の相談を数値目標としていたよ。中々達成は難しく、もっと経営相談に従事する専従率をアップしてほしいと思っていた。
娘: それで次の表を出したんだね。専従率を70~80%にアップしてもらえると、百点満点で90点とれると自慢したいの? ※資料出所: 相川町商工会「プラン策定事業」報告書
父: いやいや、満足度は、本部の専門家に一回は会ってもらうことを心掛けていたからの数値だよ。
娘: 伴走型で時間をかけても目標として数値は達成できたんだね。
父: ただ、昼間は今後のの相談先確保?の営業?と、決まった事業者へのヒアリングして、夜を使って何日かで資料をつくり、本部の先生にお願いするスケジュールと了解をもらって、昼間に持参する繰り返しだから、ユトリが全くない状況だった。
父: 相談先に喜んでもらえると、自分も嬉しくなるんだよ。それが最初にあると相談先に行くのが楽しみになるね。
娘: 前に、お父さんの対応だと、みんな帰り際に神妙な顔で「何とかやってみます」だけれど、本部コーディネーターと行くと、帰り際に皆さん笑顔になる...とも言っていたね。
父: そうだね。先生方は話をよく聞くね。きっと相談されている人の強いところを見つけ、できることを見つけて提案しようとしているのかな…と思うよ。
娘: 話を聞くのなら専門家でなくともできるね。
父: うん、もう一つあるよ。例えば売上アップの相談があっても、一挙にV字回復は難しい。その場合、それに向けての道程で幾つか課題や目標を設け、その都度、達成を確認して進むことだと思う。
娘: よく意味がよくわからない。
父: 実は、上の表でみると「不満度」は商工会もよろず支援も同じ位なんだ。商工会は、「どちらともいえない」が非常に多い。相談指導のやり方に課題があるかもしれないと思ったんだ。
娘: そうだね。良くも悪くもなく、どちらも選べないから普通だね...となるかな。
父: よろず支援では、一社でも幾つかの課題設定をして、各々の解決を重要視されたよ。今思うと、これがあるから相談する側も受ける側も成果達成をノルマみたいに意識し、一つ一つの結果が明確だから高い満足点がもらえたんだと思うんだ。もちろん、高得点の一番の要素は、本部コーディネーターの先生方の力なんだけどね。
娘: なるほど。
父:例えば、 商工会には無担保無保証の経営を改善する融資があるよ。経営の問題や課題を改善するための融資なんだけれど、融資決定をした時点で調査すれば、まさか満足度50点以下とはならないからね。それを数カ月先になって改善結果が出ても、通常は更なる努力が必要ということが多いから、満足度を聞かれても少なくとも大満足にはしてくれないと思う。
娘: マラソンも100m競走の繰り返し的なこと?
父: そうとも言えるね。今はコロナ禍だからだから仕方ないけれど、平常時の佐渡でも人口減少で漸減する業績の中で、一緒に伴走しても中々満足してもらえないよ。
娘: それはそうかもね。
父: 一番いいのは、最初によろず支援から問題点と課題を明確にしてもらって満足度を高めておいてもらい、その解決の道程を区切り、設けた課題を一つ一つ事業者に伴走して解決してく…かな。
娘: なるほど。
父: 間違いなく、今の満足点よりは数段高くなると思う。「不満足」を満足にするのではなく「どちらともいえない」を明確にするだけ。事業者にとっても商工会を評価するだけでなく、自分の進捗を評価することになるからね。
娘: 少し手前みそ過ぎると思うね。でも、相談相手の話をよく聞き、専門家と一緒にすれば一定の満足度を持ってもらえることはわかった。
よろず支援拠点事業は、公益財団法人 にいがた産業創造機構(NICO)が関東経済産業局から実施機関として受託している事業です。公表されているNICOの第5期の事業評価報告の年次別の報告をみると、二つの年度で次のことを記載してくれた商工関係団体がありました。佐渡版「NICO」においては、専門家の常駐ではなくとも一定の成果は上げられると思いました。
What do you think?