コラム:出生数が200人を割る! ~それは20年前に決まっていた ?~

By gkmyhn, 2022年4月2日

(編集) 令和3年の新潟県福祉年報が公表され、令和2年10月1日前一年間の出生数を朱書きのとおり修正しました。 

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父:  令和3年の出生数が200名を割ったと聞いたよ。

前置き

娘:  ねえ、その前になぜ会話形式で記事をアップするの?

父:  そうだね。基本的に他の批評や批判は書かないようにしているんだ。

娘:  それはいいことだよね。

父:  でも、結果としてそうなることもあるよ。

娘:  そんな気はないのにね。取り方だからね難しいところだよね。

父:  そんな場合、会話形式でお前に言わせればよいのではないか….と!

娘:  それはひどい! まあ、会話形式だと微妙なニュアンスで伝えられるときもあるよね。

父: それと….

娘:  まだあるの?

父:  人口の「再生シミュレーション」ツールを公開すると言いながらアップしていない。

娘:  どうしたの?

父:  年のせいか、細かなことや集中することが中々できないんだよ。

娘:  それで、興味あるコメントがあったので先にやっているの? 責任ある仕事は頼めなくなったね!

出産年齢

年齢別出産数 (佐渡市資料から転載)

父:   本題だけど、ほらっ。右図のように生物としてのヒトは生まれ20年ほど経つと大人になり再出産年齢になるよね。

娘: 再出産年齢は15-49歳だけれど、図をみると殆どは20-40歳で出産しているね。

世代交代ごとに女性数激減

父:  うん。それで、佐渡の0歳人口と20年後に出産年齢になる0-20歳女性数を比較したのが上のアイキャッチ画像の表だよ。

娘: え~と、見方がよくわからないわね。

父:  令和2年に248人の出生があったよ。その母親は、20年前に0-20歳だった6,741人が21-40歳になり出産した...とみるんだ。

娘:  では、その出生数248人は、20年前の出生数528人の47%の数と見るんだね。

父:  そうだね。その528人は、その20年前の出生数884人の60%だから、一回の世代交代だけで出生数は大きく減少しているよね。

娘: この減少の一番の原因は、その右に記載してあるように「出生前0-20歳だったときの女性人口」欄の女性数が減少しているからだ…ということを言いたいのね。

父:  うん、生まれ育った女性数が出産年齢へと置き換わるごとに激減しているよね。

娘:  そのように表をみると、その前の世代の0-20歳女性数は11,004名だから、その61%に減った人数6,741名の女性で産んだことがわかる。

父:  そして、令和2年の0-20歳人口は、前の世代の50%にあたる3,345名と既に国勢調査で確定しているよね。女性数が半減しているのだから、20年後の出生数も半減するだろうと考えるのが普通だと思うよ。

娘:  そうか、だから今の出生数は20年前に大方は決まっているというタイトルなんだね。黄色のセルは推計値とあるから、令和2年国勢調査を基に将来推計した0歳児の人数だね。

父:  そう。こうして20年後の出生数も基本数は今の段階で決まるんだ。

娘:  そうだとすると、女性数が前の5割、6割と減り母親となる人自体が半減する勢いだから、出生率が幾ら上がっても間に合いそうにないね。

父:  半減しても、今の出生数を保とうとすれば一人当たり出産数は2倍必要になるよ。一回だけならまだしも、その後は大人世代になるごとに4倍、8倍の出産が必要になるよ。出生率が下がっているから、追いつかないよね。

娘:  そうだね。でも結婚も出産も子どもの数も決めるのは個人の自由だよね。

0-20歳人数と0歳児を関係させていますが、0-20歳人口は流出とUターンを考慮していません。また、21-40歳となった場合にはIターン者が加わるため、0歳児を出産した母集団にはなっていません。流出やUIターンを考慮すると、そこに原因があるのではないか一見すると思う場合があるためです。減少の基本部分を説明するためのイメージとして見てください。

長期戦略

父:  このように人口は長期戦略なんだと思うよ。

娘: そういえば、人口には慣性があり、対応しても結果をみるのは数十年先と言っていたね。

父:  うん、だから30年、40年の推計では結果はわからないことが多いんだ。新潟県が推計期間を100年とするいう新聞記事を読んだ記憶があるけれど、この「人口の慣性」も考慮しているかもしれないね。

娘:  なるほど。

父:  そして、次は300年位の計算が出てくると思うよ。減少が止まらないと思う地域は、消滅しない策はないかと思うはず。そのときは「どうなるか」という推計というよりも、今の実態数値を消滅までのばしてみて、それをどこかで止まるための「どうするか」の机上の模擬実験、予行演習そして検証道具が必要だと思うよ。

娘:  その一つが、公開しようとしている人口の「再生シミュレーション」ツールだと言うの? お父さんは思い込みが強いから…

父:  まあ、それは生まれ変わらないと治らないと思うよ。

娘:  要は、今の結果はお父さんたちの時代の結果で、今の私は、これから生まれる子どもの時代への原因を創っているということだね。

父:  そういうこと。次のグラフをみてよ。何十年も一貫して人口が増え続けて日本一の村となり、「市」となった佐渡と同じ位の地域だよ。

何十年も増加し続け日本一の村から市へ

娘: みると、地域の推計もお父さんの推計も再び減少しているね。

父:  そう、平成26年1月に「市」となる前に、「人口5万人の日本一の村」と自信に満ちていたから「本当かな? 長期的に見ると違うかもしれないよ」と思って当時計算したんだよ。そうしたら人口減少に転じていたよ。

娘: なるほど、人口には慣性があるから、日本一までにしたのは前代の頑張りで、将来下がるのは自信ありげに言っている貴方たちの責任だ...と。お父さんのヒガミだね!

父:  久しぶりに最近サイトをみたらグラフのように下がる推計が掲載されていたんだ。それで前に計算したものと一緒のグラフをつくって紹介したのがこれだね。

娘:  なにか変わっていることもあったの?

父:  グラフでは線が重なり、差が小さすぎてわからないけれど、それでも計画を上方修正するような形で推移していたんだ。

娘:  頑張っているね。どうしてだろう。

父: 改めてホームページをみたら、次のサイト(ここ)があったよ。管理の仕方に人口に対する本気度が出ていると感じたページだったね。

経営視点で人口を診る

娘:  お父さんは、経営視点で人口を診たいと常に言っているよね。この少子化については、どう診るの?

父:  うん。その前に言いたいのは、人口の専門家でもないからね。「現場でやってみなくちゃわからない」精神だけだよ。そうすると、「アレツ、少し違うぞ!」と気づくことがあるんだ。

娘:  わかった。「人口はこうだ」ということではなく、単に「経営視点で診る人」という観点での「見方」としてとらえてほしいということね。

父:  まず次のグラフを見てよ。今から55年前の昭和40年と令和2年の国勢調査の人口ピラミッドだよ。長い期間と思うけれど、前述の20年毎の種族保存?の世代交代の観点からみると、55年前だから3回まで世代交代していないよ。

娘:  それだけで、ドッシリと三角形だったのが逆三角形になってしまっているよね。

父:  昭和40年のピラミッドに、高校を卒業しての流出が若者年齢の極端な少なさとして出ているね。

娘:  2枚だけでなく、各世代交代の時のグラフを並べ比較すると、佐渡の経緯と歴史がわかるね。

父:  同じものが経営にもあるんだよ。ほらっ! 売上って1年後は再びゼロからはじまるよね。

娘:  そうだね。

父:  創業以来ずっと売上活動の結果を残し毎年引き継いだもの、それは会社の履歴書と言われる「貸借対照表」なんだ。それをみればどんな会社かわかるし、比較すれば、どのように資金を調達して、どのような使い方をしただけでなく、変化の流れからその会社の性格までわかるよ。

娘: 会社の売上減少が地域でいえば人口減少、それを挽回しようと活動した結果が貸借対照表であり人口ピラミッドと言いたいのね。

父:  そう。会社は売上減少などが続くと赤字になり、それが続くと何時しか赤字体質に陥るよ。その過程で貸借対照表はバランスを崩した健全なのではなくなり、いつか債務超過になると挽回は難しいね。

娘:  人口ピラミッドも人口減少が続くと不安定なものになる…ということね。じゃあ、どれ位の不安定さが今あると思うの?

父:  会社を例にすると、改善点を上げれば幾つでもあるけれど、挽回には2、3点で7割方解決するほどの策が必要な時がくる。人口もそれ位のところにあると思うよ。

娘:  それほど悪いの!

父:  だって、一回の世代交代で女性数は半数になり、次はその半数、その次はその半数という流れに乗っているんだよ。

娘:  確かに売上減少で半減し、さらに半減することが体質となっている会社が、従来のやり方で生き残ろうとするのは厳しいね。

父:  経営ならば、考え方も含めての再構築、そして新たなビジネスプランが必要なステージにいるよね。

娘:  その新たな視点が必要と思っているときに、新潟日報の「大胆な発想転換が必要か」という社説とピッタリだったわけか!

短期決戦

父: ただ、佐渡の場合は、今は大きなチャンス(「チャンスの到来」を参照)があるから行おうとしている短期決戦に期待しているよ。

娘:  そうだね。

父:  ただ、多くの地域は、「縮小する社会と発想の転換」(ここ)にある新潟日報の記事「利用者の減少が止まらず苦境にある公共交通機関の問題もこれとどか似ている」状況にあると思うよ。

娘:  かつて、お客様が少なく飛行機がなくなるから皆で乗ってみたいなこともあったものね。

父:  そうなんだ。多くの地域は、長期戦略が必要な人口であり、20年も前に大方決まっていた出生数なんだけれど、今となれば短期決戦で対応するしかないという状況に陥っている。

娘:  佐渡でも、公表された会議録か計画で、「出生率は重要視しない」みたいな語句があったとお父さん言っていたよね。

父:  はじめは、「移住だけで対応しようとすると、人気があり若者流入が多いのに消滅可能性都市に入っている豊島区みたいになる」と思ったけれど、今は主旨が違うと思っている。

娘:  どう違うの?

父:  ほら、人口は長期戦略ということは、前述の再出産の世代交代の長期間など、お前の言う「人口の慣性」があるからだよ。でも困りごとは目の前に多い。とても何十年単位では待てない、何とかしなければいけない…ということだと思うね。

娘:  なるほどね。でも公にする書類で書いてあるということは、国などの方針でもあるのかなあ?

父:  そうなのかなあ。地域の「消滅」などと言われているときに「何十年単位で対応しよう!」と言うことはできないものね。

一旦 諦めてみる?

娘:  じゃあ、どうすればよいのかなあ?

父:  一旦「諦めてみる」視点からみると、途が開けたり見えるときがあるかも...と。

娘:  お父さん、それは観客席にいる人が言う言葉だね。一番嫌われるタイプだよ。

父:  でもね。「人口」に興味をもってから30年以上の長い間を振り返ると、最初は「へえ~、佐渡の人口は減るんだって!」と面白がられたよ。行政の総合計画も人口増が前提だったね。

娘:  そんな時代があったんだね。

父:  そのうちに人口減少が本格化して挽回は困難ではないと思う時代に入ったよ。補助団体の商工会に勤めていたから「人口は減る」話は出すと嫌がる風潮があり触れることはなるべくしないことにしたよ。

娘:  なるほど。

父:  そのうちに、行政も計画や広報で減ることを言い出すようになったよ。そして、今日では減ることを言ったり書いたりするのが普通というか平気になったね。

娘:  うん。ただ、あまりに平気になるのも困るよね。思っても実現できないことが多いのに、思わないことは実現しないことが多いから….

父:  そう、人口減少対策は行政の仕事、私たちは活性化…と分かれそうな気がする。本来、継続する地域のための「活性化」と「人口」は、企業が繁栄するための「計画」と、それを「数値」に置き換えた関係だと思うよ。

娘:  経営的な見方から説明すればね…

父:  そうだったら、今一歩進んで、今の実態数値で消滅までの300年、500年分の計算をして、今のままだと行き着くだろうゴールを先にみることもいいのではないか、こと。

娘:  それはありかもしれないね。

父:  消滅から現在をみると、どうしても残さなければならないこと、もっと違う方法があることも思いつくことがあるかもしれない...それを”見える化”できる道具として、このツールを使ってほしいと思うよ。

娘:  うん。今の活性化って、75歳になるお父さんを30代に戻そう...みたいなところあるものね。行く末をみると、それは思わないかもね。例えば、先進地視察でも佐渡よりも過疎が進んでいるところに行くことで、無くなってはいけないものや残すべきことが明確にわかるかもしれないものね。

父:  現役時代に、いろいろな面での先進地に視察したよ。帰りるときの話には、「あそこは、こーだからできるけれど、うちには無いしね」が必ず出るものね。

娘:  確かに!

父:  話を戻して、当時の人口問題研究所の方に推計の仕方を教えてもらったときに、「シミュレーション」できるようにしたいと言ったら、計算の途上で違う変数を入れたりすることは好ましくないと言われたよ。

娘:  それでどうしたの?

父:  経営で売上高の将来予測をする場合、正確に「円」の単位まで出そうとするのではない。どうなるかの傾向を予め知って、その「対応」を練るのが目的だ...と思ったよ。

娘:  それはそうかもしれない。

父:  そこで、「行う人が納得して条件など指定すれば、それでよいのではないか」と思ったんだ。

娘:  お父さんらしい決め方というかやり方だね。使う人によく言っておかないといけないね。

佐渡市の場合

父:  話を戻して、佐渡市に限って言えば、設定した人口の目標値を達成しよう、後へは退けないという気持ちが伝わってくるよ。

娘:  どんなところがなの?

父:  どこかで、確か若年層女性の移住を毎年20人、40人、60人と増加させるとある文書があったよ。出産数をねらったものと見る人がいれば、「女性は産む機械ではない」と反論されそうだからね。その良し悪しは別にして、とにかく目標を達成したい気持ちが伝わってきているよ。

娘:  そうだね。

父:  いままでの計画では、「人口はこのように減少していく、これは全国何れも同じ、だからこのように対応する」という感じの説明的な文章の流れだった気がしたよ。

人口の安定化 ~消滅しない地域~

娘:  わかったわ。多くの地域は、会社を例にすると売上減少が続き赤字体質となって債務超過の企業が再構築して新しいビジネスモデルをつくらないと乗り切れないのに、大売出しや従来の営業努力など力づくの販売促進策で乗り切ろうとすることに似たやり方を繰り返している….これを言いたくないので私を使って言わそうとしているのね。

父:  そう。例えばマラソンで長い時間の戦略を考えるとき、「いや、マラソンは100mの繰り返しでしょ!」と短期作戦の繰り返しで勝負するような感じかな。

娘:  よくわかる例ね。

父:  でも、きっと殆どの地域は思うようにいかないよ。もし佐渡も挑戦の結果うまくいかなかったら、私の提案「人口の安定化」(ここ)についても、これから公開する「人口再生シミュレーション」ツールを使って「アーダコーダ」と試行錯誤してほしいと願っているよ。

娘:  そうだね。お父さんは解決の答えがわからないから、消滅する訳にもいかないので皆で考えよう。そのための道具を提供します….ということだね。

父:  そうすると、”人口が増える、いや止まるか”とか、”これまでにも人口の増減の周期があった”とかいう、人口そのものではなく 単に「経営視点からの人口」という形で誰に気兼ねすることもなく、一つの見方として思うことを書けるしね。

娘:  「人口増」か「消滅」かではない、もう一つの選択肢ね。

 

2 Comments

  1. 廣瀬擁 より:

     後藤さんヒロセマモルです。ご無沙汰しています。大変大切なことを発信され有難うございます。
    小生が現役の時人口減少問題で議会質問を致しました。その折出生可能人口の顕著な減少が子供の出生数の減少になっている旨の質問に、一市民の女性から議会事務局に抗議の電話頂戴した思いを呼び起こしました。
    今から15年前の話ですから当時としては早すぎた質問だったのかなと感じました。
     後藤さんこれからもこのことを大いに発信されて佐渡人に啓蒙してください。

    • gkmyhn より:

      わかりました。間もなく、人口の増減を自由に机上でやってみることができるツールを公開します。集落でも旧市町村単位でも、佐渡市でも、新潟県でも、全国の計算でもできるようにしたいと思っています。それを使うと今回の記事のように、計算するだけでなく、いろいろなことに気づくことが多いです。ツールを公開したら、その使い方として、私自身もいろいろな例を計算して記事にしてみます。
      ———–
      返信欄を使ってPRさせてください。公開する人口の再生シミュレーションは、地域が今のままだと「どうなるか」がわかります。しかし、本当の目的は増やすことは難しいが、かといって「消滅」させるわけにもいかない地域を「どうするか」を考えてもらい、それをシミュレーションで試行錯誤しよう..と呼びかけたいものです。

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