コラム:人口95人の集落へ年2名の移住⇒こんなことが起きる! ~アプローチを変えよう (その2)~

By gkmyhn, 2022年5月31日

人が暮らす文化を含めた生活の現場が集落かな...と思います。その現場で使える集落に関する必要事項を添えた人口推計ツールについては、近々に公開したいと思っています。人口が数人の地域もあるため、幾つかを集めて集落人口とできるようにしたいと考えました。その集約のテンプレートが気力の問題で後回しになってしまっています。

ここでは、これまでの途上で気づいたことについて、アプローチの方法も変える必要があることもあり紹介することにしました。

生活の現場となる集落人口

上のアイキャッチ画像は、令和2年の人口が95人の複数集落の合計です。まず、人口ピラミッドをみたとき、この集落に人口推計をする意義は何だろうと思いました。消滅の時を知ってどうするのかとか、再生ができるのであれば、既にこのようにはならなかったのではないか等の思いです。

そうは思っても「やってみないとわからない」が私のやり方なので、まず少ない人数の移住をさせてみました。毎年20-24歳の女性1人、25-29歳の男性1人が移住とする仮定を設けました。推計するときは、男女同数を仮定することが多いのですが、それは男は何人いても人口は増えないため、平等にしようという思いが常に出てしまうためです。こうして計算した結果が下の折れ線グラフです。通常推計では消滅していく集落ですが、年2人の移住で少しずつ増加し、遠い将来では200人ほどで一定となりました。前述以外の前提条件としては、移住者は二度と流出しない、もし結婚して子どもが誕生したら佐渡島の他の子ども同様の移動率とする。出生率は佐渡島の令和2年のものを使用する…としました。右側の人口ピラミッドは、人口が安定したときの状況で、このような構成が続きます。

安定人口理論

「安定人口理論」というものがあります。

その内容は「人口移動がなく、一定の年齢別出生率と年齢別死亡率の下に再生産が行われるとした場合、十分な時間が経過した後には人口増加率及び年齢構成が一定となる。また、このように安定した後の人口増加率および年齢構成は、前提とした年齢別出生率と年齢別死亡率によって一意的に定まり、当初の年齢構成とは無関係であることが数学的に証明される。これを安定理論と呼び…云々」(出所:現代人口辞典、人口学研究会編)

移民と思われるほどの流入があっても減少する一方で、僅かな人数の継続的流入で増加して安定するのは、この「安定人口理論」に関係あるのかもしれません。ただ、例とした集落の人口推計は、移動率を加味していますから「人口移動がなく」とはいえず、複数の仮定も設けていますので、そうとも言えません。ただ、一人でも移住が続けば消滅することはないでしょうから常識的なことと言えるかもしれません。例えば”穴の開いたバケツ”に水を入れると、その出入りのバランスでバケツ内が一定量となるところはあるでしょう。

人口推計は、当初は30年先位でしたが、最近は40年位になり、新潟県では100年先までとなったようです。これは、人口には慣性があることから数十年先でないと結果がでないことが多いためでもあるでしょう。前項で例に上げた集落でも、グラフではわからないですが、増えはじめるまでに20年間かかり、それまでは減少が続きます。これは、移住などで増えた人たちによる子どもが増えはじめ、その子どもが大人になり更に子どもが多くなることを繰り返して人口の60%位にならないと全体は動かないため….と言った説明をしてきました。経営でいえば、売上減少の中で新製品が売れたとしても、全体の減少と新製品の伸びがぶつかるまでは売上減少が続きますと同じです。

今回、小さな集落の人口推計を試みた前項に記載した症状をみて、新たに気づいたことがあります。頑張って移住などを増やそうとしている地域が、更に人口減少する大きな要因を、それ以上に、多い高齢者が順次なくなっているためと説明してきました。佐渡島を例すれば、60歳以上の人は人口の半数25000人程あり、その減少は今後も進みます。国は、2043年以降は人口減少に拍車がかかる(中小企業白書2015年)として、例えば経済産業省は半世紀ぶりに中小企業の基本法制定など政策の大転換もしています。これは、私をはじめとする団塊世代が亡くなる以降のことを説明し、今から対応を始めている訳です。この確実となっている亡くなる人を含めての人口減少論議は止めてもいいのではないかと思いました。

実際に、各市町村が今頑張って行っているUIターン等の対策も、次項の人口ピラミッド図に掲載した下半分の層”亡くならない世代”に対する対応が中心になっています。結果として、それは次の世代の人口の数とバランスを確保しようとする対応です。人口減少という同一のことになのに、視点を全体としてみると亡くなる人の多さが大きく原因して”減少””消滅”というマイナス思考となります。一方、どの市町村も現実に行っている対策は、高齢者に更に移住してもらおうというよりは、若い世代のUIターンの促進など、次世代の数とバランスをとる活動に結果としてなっています。こちらの視点からは、”挑戦””開拓”といったプラス思考が浮かびます。

このサイトは、経営的な視点で人口減少を診るとしています。経営においても、売上減少が続き新製品を販売することがあります。この途上で努力するのは新製品の売上アップをする活動です。その過程では、ノルマを果たした等を含め挑戦や喜びの声です。その時も全体の売上は減少は続いているのですが悲壮感はありません。人口減少に対する視点も、「出生+転入」-「死亡+転出」から「死亡」を外してみませんか。それは、次世代の数とバランスを確保する数値そのものでしょう。人口の慣性の視点で捉えれば、今は前世代の結果、私たちは次世代の因を創っているともいえるわけですから、そのような視点でよいのかと思っています。

「総人口の減少」を止めるから、「コアとなる若者人口」のバランスづくり!

前項は、集落の人口ピラミッドをみて、減少を止めるというのではなく、まず最小人数を増やしてみようとした試みでした。佐渡島でいえば万人の単位、その旧・市町村の単位でいえば千人の単位で移住?移民?があっても何事もないように人口は減少するのに、僅かな人数で安定することは不思議です。ただ、一人でも移住が続けば、何時になっても消滅はしないということは普通に考えられることです。300年とか500年まで計算する人や機関はないから、これは気づかないというだけかもしれません。市町村の単位では、「人口減少」について力に応じた「コア人口」をつくり積み上げましょう…と言うのでは、そんな悠長なことを言ってはおれない長くとも5年間で一つの結論を出さないといけない…となるでしょう。100年単位でみることは中々難しいのかもしれません。

ただ、日本全国どこの市町村においても、右の佐渡島の人口ピラミッドの例のように、上の部分の人たち、高齢者を中心とした人たちが順次亡くなっていくことが人口減少なんです。やはり、下の部分の数とバランスこそが、今の世代が子どもや孫たちの将来を考えるうえで一番大切なことだと思います。

 

 

友達5人できるといいね! ~小さな努力の大きな効果~

行政であれば、「人口減少を止める」と言わなければ許されない感じがします。でも日常生活の現場となる集落段階では、前述のように手が届きそうな僅かな人数が新たに住むことで、遠い将来も今よりも安定した人達が生活ができることがわかりました。

昔のこと、四国かどこかの地域おこし協力隊の方から頼まれ、人口1000人程度の地域の将来人口推計と過疎化が止まる再生の目安をシミュレーションしたことがありました。確か、目安値は5~10人のUIターンだったと思います。その方は結婚されるようで、当時のブログ?に「子どもが保育園?に行くとき、友達5人ができるといいね」みたいなニュアンスの書き方をしていました。志が高いと感じた方でしたが、「過疎化を止めたい」と真正面ではなく”友達5人”と置き換えたことに、このようなことが現場での展開には必要なんだと感心したものです。

私の地域は、新たな住人が増え、10年以上にわたり人口は横ばいで今年も既に数軒が新築されています。聞くところによると、既に住んでいる友達や知り合いの紹介で場所を決めたという方も案外いるようです。農業のに担い手についても、全体数からすれば危機なんでしょうが、現場となる集落段階でみれば僅かな新規就農者があれば消滅はなく、それが続けば安定した人口ピラミッドになる可能性も出ます。集落という生活の現場では、日常的には僅かなことの継続で足りるんだと思いました。そして、人を誘うには、背景として誇れる地域が前提となると改めて思った次第です。

 

 

 

 

 

 

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