消滅可能性都市その3 ~ブラックホール型自治体を考える~

By gkmyhn, 2024年5月6日

二度目の懸念 ~ヒトが存在できる根底部分に対して~

(1)一度目はヒトの住み方についての懸念

昭和の頃、大気や川などの汚染がひどくなり「公害」が叫ばれ、私の勤めた会社でも多額の資金をかけて汚染防止設備を設置しました。その時に習ったのが「地球には、各々の生物が生きるための活動をしても汚染がない自然の循環(再生産)システムができている。ところが、その中でヒトは独自の再生産システムを構築し、自然の力では循環できないものを排出している」でした。

この一度目は、勤めて間もない若手社員だったので「なるほど、そこまで考えなければならないのか」と率直に受け入れました。今考えると、一度目もヒトが存在し続けるための問題でした。

(2)今度は、ヒト(日本人)そのものの存続についての懸念

「消滅可能性都市その1」で紹介した「全国地域別の目標出生数と人口」ファイルをみると、全国平均の合計特殊出生率は1.26で、人口が再生産できる2.07には遠く及んでいません。同出生率が2以上のところは自治体の3%未満で3以上は沖縄で1箇所あるに過ぎません。

この同出生率は、私の3人の子ども夫婦6人が3人又は4人の孫をもち、仮に4人の孫とすれば半数の2人が女の子となる計算(※1)です。その女の子2人が成人して産む曾孫の人数2人で、うち女の子は1人となるでしょう。

※1 生まれる子どもの男女比は女性を100とすると男性105と永年にわたり不思議と一定です。

こうして女性数は次の代で半分、その次の代で当初の四分の一と急速に減る計算です。通常、それほど減少を意識しないのは高齢者を含む大人の人数が多いため/目立たないだけでしょう。例えば、団塊の世代の私の同級生は、生きている人だけで今なお1100人余りですが、最近の出生数は200人前後です。1100人が退場して200人が入る…..これだけでも事の大きさがわかります。

 

懸念の”見える化”

前項を受けて私なりに「懸念」を”見える化”してみようと思いました。

題材としては、「ブラックホール型自治体」の中の「豊島区」を取り上げてみます。その理由は、若者に人気ある地域であり、佐渡の若者流出先の”仮想敵国”的な存在としての「やっかみ」と「あこがれ」があるからです。また、消滅可能性都市と指定されたこと、そこから外れたこと、そしてブラックホール型自治体と指定された等の話題性もあるためです。

豊島区は、消滅可能性都市の指定から10年、若者の住みやすさ、子育てへの支援などの努力を行い、その指定から今回は外れたとニュースなどで聞きました。これからも人口は増えつづけるようです。そこで、この人気があり努力もあった豊島区へ、人口減少が続く日本の0-49歳の人が全て移住したらどうなるかを計算してみました。これは、新たに指定された「ブラックホール型自治体」との関係でも私にとって興味あることでした。

(1)豊島区の人口推計

まず、今のまま推移すると人口はどうなるかの計算してみました。次のグラフのように、どこまでも増加します。

前提:生残率、移動率は社人

研の2020~2025年データを将来にわたり使用。これは、先々の変化を予測せずに今の延長の結果をみるためです。出生率は、今の0-4歳子どもと15-49歳女性の割合で将来も続くと仮定。

 

  (2)豊島区の人口の再生産力

地域外との流出入がない「封鎖人口」で計算してみました。次のグラフのように減少していきます。これが、次に記載した「ブラックホール型自治体」の特徴に合い指定されたのでしょう。

ブラックホール型自治体:人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、しかも当該地域の出生率が非常に低い自治体を言います。

【東京都】のブラックボックス型自治体:▼新宿区▼文京区▼台東区▼墨田区▼品川区▼目黒区▼大田区▼世田谷区▼渋谷区▼中野区▼杉並区▼豊島区▼北区▼荒川区▼板橋区▼練馬区▼青ヶ島村  ※全国25自治体が指定され、そのうち17自治体が東京都にあります。

(3)日本の0-49歳人口の大移住

移住する人数は、65,809,114人で2025年に一挙に行います。住む家、仕事その他のことは一切考慮していません。また、全てが移住することから、地域からの流出入がない「封鎖人口」を基に計算しています。半分本気、半分冗談の一種のパロディーと考えてください。地域に残る50歳以上の人は50年後に殆どか亡くなるでしょう。したがって、2070年以降は、このグラフの人数が日本の人口となります。これは、日本をブラックホールがヒトを飲み込んでいく姿でもあります。そのスピードは速く、2100年に8000万人を維持したいとの人口戦略会議の目標に対して、その人口は3300万人余りです。そして、2200年には新潟県位の人口になり、2400年には旧佐和田町位の人口規模となります。

日本各地に散らばっているときよりは、速いスピードで減少していくことになりました。これが、ブラックホール型自治体の恐さでしょう。 後日”「消滅可能性都市」その3″で改めて紹介しますが、日本の人口の8割方は、このブラックホール型自治体を含む合計特殊出生率の低い2割の地域に住んでいます。2060年を目途に合計特殊出生率2.07を目指すと人口戦略会議「人口ビジョン2100」は言います。この人口の8割を占めながら出生率の低い地域、果たして目標を達成できるのでしょうか。それが、日本人の存在自体が無くなる可能性もあるという私の懸念です。

なお、「キャプション画像」は、この下のグラフを人口ピラミッドiに置き換えて動画にしてみたものです。

What do you think?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です