「集落」に対しては「人口再生シミュレーション」ツールの使用ではなく新たなアプローチを提起します。 ~アプローチを変えよう (その4)~

By gkmyhn, 2022年6月24日

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使用しない理由

合併前の各市町村規模、人口の大きな1500人位の集落又は、若しくは小さな集落の人口を幾つか集めて1000人程度の規模となる地域には「人口再生シミュレーション」ツールは有効です。

しかし、1000人を割る人口になると、Uターン前後の若者層は各5歳階級年齢で10人前後となってきます。こうなると、少ない移動で移動率が大きく変わるため長期的に信頼できる数値とはなりません。そこで、とどれだけの乖離があるかを確認すために、h22-h27年、h22-r2年の二つの期間の移動率を別々に作成すると共に、両期間のグラフを自動的に比較できるようにしてあります。この二期間のグラフの乖離の程度を確認ください。その結果、もし乖離が大きく、修正するにも原因を発見できない場合は、このツールを使うことは避けた方がよいと思います。

なお、断念する場合でも若者の半分はUターンするようにしようなど「移動率」を任意に決めて、いろいろなケースで計算することをお勧めします。定年になった古里出身者に「終の棲家」にしてもらったらどうなるかというのもよいでしよう。移動率が安定してくる30歳以上の年齢階層は生残率だけで計算して、現時点で集落の活動を担っている人が将来何人になるかを知るのもよと思います。自分で計算すると、移民規模でも止まらない人口減少が、僅かな人数で安定することがあるなど、今までに気づかないことが見えてくる場合があります。

「集落」の人口推計 ~活用の可能性と限界~(ここ)もご覧ください。

新たな方法を提起

集落人口の減少の捉え方については、次の(1)の農業の場合のように、「人口の減少を止める」ではなく「担い手を確保する」という「攻め」の捉え方を提起します。特に、新しい方法ではなくて常識といえば常識の範疇なんですが、人口全体の減少に目が行ってしまう場合が多いようです。

(1)まず「減少」の捉え方は農業の例に…

上のアイキャッチ画像に使った人口ピラミッドは、佐渡島の農業経営者の人数です。2020年農業センサスで合計3,404人とありました。農業人口の高齢化、若者層の少なさがわかり、課題は担い手の確保ということがわかります。

実際にも、人口ピラミッド全体に対して「農業人口の減少」というよりは、それの減少に対応した「担い手確保」の対策が中心です。きっと、農業は農地とわかりやすく繋がっているため、耕作放棄地とならないようにしたいことが念頭にあるためだと思います。

「農業人口の減少を止めよう」というよりは、「担い手を確保」しようという「攻め」が表に出ています。これと同様の捉え方を「集落の人口減少」でも次項(2)のようにしよう….ということです。

(2)同様の捉え方を集落人口に…

「集落の人口減少」の場合をみましょう。下の例は、人口95名の集落で60歳以上が71名います。そして人口ピラミッドの構成は、上の農業同様に大きく崩れています。しかし、捉え方は「人口の減少を止めたい」が中心です。

しかし、この地域の40年後を考えると、人口減少とは、この60歳以上の方が100歳に向けて順次亡くなっていくことともいえます。それは(ここ)でも記載したとおりです。

それであるならば、上の「農業の場合」で記載したように、既に決まっている高齢者のことは別にしてよいのではないでしょうか。

農業の「担い手確保」に相当する「若者層」「子ども層」の確保を前面に出し、人口減少対策というよりは、若者の世代や子ども世代を何人か確保するかとか、年齢バランスを健全にしようとか、出生数を多く使用など、「攻め」の視点に農業同様に前面に出してよいのではないかと思います。

(3)具体的な提起の内容は…

考え方と行動や活動の流れを次のように箇条書きで示しました。

    •  40年後の遠い将来の集落を想定してみます。
        • 規模の違いはあれ、過疎地の人口ピラミッドは上図と同様バランスが崩れています。
    • 40年後には、上の(2)の人口ピラミッドでの60歳以上の人は殆どが亡くなっているでしよう。
    • 人口減少数をみると、その9割以上が60歳以上の人が順次なくなることが原因です。
        • 上の図の事例では71名で人口の7割以上、佐渡島では25,837名で人口の5割ほどです。
        • 40年後に、この年齢層の人口は減少することは現時点で決まっている...ともいえます。
    • このことから、60歳以上の人が亡くなることが大きな要因である人口総数の減少を憂うのではなく、今60歳未満の人口ピラミッドに焦点をあて、そのバランスを改善するという「攻め」の視点で対応するのがよいと思います。
        • なお、視点が変わるだけで、活動の内容であるUIターンと出生数の確保は、その必要となる規模は違いますが同じともいえます。
    • 上のグラフの0-19歳の僅かな女性数が、20年後に出産する子どもの基本数となります。何もしなければ間違いなく「消滅」への道を辿るでしよう。
    • 今後、行政からの支援策は増えると考えます。しかし、現場は何もせずともよいのではなく自助努力を求められるでしょう。また、例えば500名を超えたといわれる佐渡島のUIターン。400余りある集落に振り分けられるわけではないでしょう。
        • 過疎化は、その過疎地の周囲の集落から、その地域の中央にある集落へ人口が移動する側面もあります。
    • したがって、多くの集落では、行く末が「消滅」か「存続」かと考えると、現状では前者の可能性の方が高いでしょう。
    • 一方、上の95人の集落へ毎年二人20-24歳女性、25-29歳男性が年間各々1名のUIターンあれば、今の佐渡島の出生率1.4ほどでも遠い将来には200名ほどの人口で安定します。「人口の不思議」(ここ)をご覧ください。
        • 「二人」の意味は、一人では結婚・出生の期待ができないためです。一人でも消滅はしません。子ども層がいないだけです。
    • 一番よいのは、移住ではなく今の幾つかの家庭が代々承継できることです。生活ができる状況があれば、承継する戸数分だけの人口は維持できることになります。
    • その場合の生活の糧は、売上先が地域外にあり人口に関係なく雇用確保できる企業で働くとか、売れ先が確保されている農林水産業に従事する等でしょう。耕作放棄地が云々ではなく、条件が良いところのみ工作となる必要があるかもしれません。これらの人達が、消滅しないための「人口のコア」となります。
        • 通常、事業所数は人口に比例(ここ)するため、過疎化に比例して働き口も減少してしまいます。「人口のコア」として生活を何人つくれるかで、その人達を対象にした事業所がいくつできるかが決まる流れとなります。
    • その他
        • 以上では、人口総数の把握ができません。それは、どの地域でも行われている各集落の総会資料で報告している人数の把握でよいと思います。実際の人口とは異なりますが、この人数は現場で共に活動する人達の人数です。実際には、アパートに入っている一部の人とか、何らかの事情で集落に入っていない人はいるでしょう。
        • 5年、10年後の子ども層は、親御さんへの意向調査、出生数は市町村単位の出生率が、地域の諸事情を最も反映させているでしょう。こうして、10年後までの人口予測は可能でしょう。区長を経験してみて、700名位までの集落であれば、実地調査による把握はできると感じています。
            • 「地域の将来を知るための情報として人口推計をするが、統計にのっとった正確性に目が行き、実地調査部分が少なくなっている」という指摘をする方もいます。
            • 集落は、生活の現場であり「どうなるか」よりも「どうするか」が課題のため、ここで提起した方法でもよいかと思っています。(私自身は少し不満足なのですが…)
        • 60歳以上の人口推計は、当ツールを使って集落外との流出入はない状況(封鎖人口)で計算するとよいでしょう。
            • ただ、高齢になると地域外にいる子ども宅へ移る状況も目立ってきました。そうであっても、将来人口を当てたい訳ではないので、「こどもさんのところへ行ったので少なくなりました」だけで問題ないと思います。
        • 私の住む地域は集落ができるほどの移住者です。聞いてみると、知り合いや友達の紹介が案外多いようです。
            • 常日頃から、うちの集落にも移住者がいるよとか、貸してもらえたり譲渡してもらえそうな空き家があるよとか、聞いてみてあげようかとか、ちょっとした話題をすることも大切と思いました。
            • たった一人住むごとにば何十年もの間は消滅しません。しかし、以上のことをするには、住んできてもよいと自分が思える集落であることが大切とも思いました。

関連する事項

(1)頑張るより仕組み変え

かつて、全国過疎調査として、佐渡島の両津地区よりも高齢化が進んでいた地域のうち60カ所に対して、商工会を通して調査したことがあります。調査内容は一つだけ、「過疎で困っていることは何ですか?」をカードに書いてもらうものでした。回答は、田畑が荒れ放題とか、祭礼行事ができなくなったとか、若者が地域などの行事で忙しくなった等(ここ)※1同じようなことでした。わかったことは下の図のように、5万人の地域も、1万人、5千人、3千人の地域も、以前のシステムをより少ない人で行うために出る支障でした。そこから出た答えの一つは、「頑張る特定の人に頼るよりも仕組み替え」、そして「とにかく地域を盛り上げの地域の活性化」など「攻撃は最大の防御」というやり方ではなく、地道に攻めと守りの両方を大切に行うことでした。
※1「過疎地で何がおきている」「過疎・・そのポイント!」「過疎の《困りごと》キーカード」を参照

(2)始めませんか「見直し運動」「改善運動」

40年後には60歳以上の方の殆どが亡くなり、その人数は殆どの集落で現時点で人口の半数前後でしょう。では、今の60歳以上の人口規模を40年かけて増やせるかといえば難しいことです。

今後も減少するのであれば、自分達と次世代の集落に関する”ヒト・コト・カネ”の負担軽減のための話し合いを始める時期ではないでしょうか。大正時代?に「生活改善運動」なるものがあったと聞きました。詳細は知りませんが、同様な運動が集落に必要な時にあると思います。

集落は、自分達のテマ・ヒマ・カネを今も将来も負担する現場です。前記「(1)頑張るよる仕組み変え」のように、人の多いときのやり方を少ない人数で行ったり負担するための「困りごと」が続く過程が過疎化でもありました。活動できる”ヒト”の減少にともなう「困りごと」については、どの集落も既に顕在化(ここ)していると思います。

お金の面でも、集会場は通常の維持費だけではなく、古くなるにつれ修繕費も比例して高くなります。また、多くは集落の人口の半数以上を占めている高齢者が亡くなりますから、建物の解体が必要な頃には、人口はかなり少なくなっている可能性があります。人口が少なくなる地域に残った人だけが負担することなく、今から資金調達する方法を検討するなど、早めの話し合いと着手が必要でしょう。

人口には慣性があり、何らかの対策をしても結果が出るのは数十年先となることが多くあります。これは、今は前世代の結果で、今は次世代の舞台づくりをしているとも言えます。遠い将来を見るべきというのではなく、目の前にいる子ども、そして孫のために集落の見直しが必要と思います。

(3)大切な移住によるコミュニティーづくり

どの地域も「移住」をねらっています。私の住む地域は移住者が一つの集落を形成するまでになっており、この10年間以上は人口は横ばいです。区長と集落長に携わり感じたことは、多様な考え方の人々が集まり一つのコミュニティーを形成し維持することは、かなりの努力を皆さんが行っているということです。

ともすれば、移住することで人口減少を止め、地域の担い手は確保されると短絡的になりがちです。それは、その集落への移住者が少ないためであり、多くなるほど多様な考え方をする人達による新たなコミュニティーづくりのスタートに過ぎません。もちろん、そのような異質の人達が集まるところでこそ、新たな生活や文化が創られるわけでもあります。

以上から、コミュニティーづくりの面からも、今困っている集落の問題や課題は今の人達で解決させてから引き継ぐことが大切、そのように集落長→区長→集落長に携わった過程で思うに至りました。

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