コラム:「海士町」の事例を「計画通りでした」と言ってもらえるための「人口再生シミュレーション」ツールです。 ~アプローチを変えよう (その3)~

By gkmyhn, 2022年6月6日

次の記事があることをfacebookで知りました。

財政破綻寸前の島が移住者で溢れる 島根県海士町 計画なき変革の先

 

そこには、次のような文章が………

〇人口約2000人の町、海士町(あまちょう)は、人口減と高齢化で、文字通り「存続の危機」に瀕していた。
しかし、そんな海士町に、2004年からの約20年弱で800名もの人々が移り住んできたという。
驚くべき移住増の背景には、町の高校を廃校から救い、地域の中心に据えようとする「高校魅力化プロジェクト」の存在があった。
地域をあげた一大プロジェクトの成功によって、起死回生の移住者増をもたらしたように見える海士町。
しかし、その成功の裏側には、地域の財政危機や、卒業生が島に戻れる産業作りなど、その時々で必要な取り組みをひとつずつ積み重ねる姿が見えてきた。

〇青い点線は、国勢調査を基にした海士町の人口予測です。人口予測は精度が高く、特に海士町のような過疎地域の予測値は極めて正確だと言われています。
しかし、海士町の実際の人口変化は青線のようになりました。極めて正確と言われている人口予測値の上限を345人も超えたのです。割合で考えると、もともと2000人ほどが予測値だったところに対して、345人の上振れですから、かなり驚異的な数字だと言えます。

〇海士町は高齢化率の高い町ですので、本来であれば高齢者の方々が自然減となった分、人口減となります。しかし、移住者やU・Iターンの方が増えた結果、人口はほぼ変わっていない。これはまさに「動的平衡」です。

 

そして、示された図が上のアイキャッチ画像です………。

これをスタート時点で数値目標とできるようにしたい………

この流れのスタートとなる2004年時点に計画で、年44名(800名÷18年間(2022-2004)≒年44人)の流入があると、2015年には2350人位になるとの数値目標があって、このような「一大プロジェクト」をしたところ大成功して、そのとおりになった。(または、実際の移住者は〇人だったため〇名不足したため何人になった)と言えるようにしたい……その計算を誰もができるようにしたいというのが、「再生シミュレーション」ツールです。

ゴールからの逆算

海士町については、2016年に中学校の総合学習で頼まれたテーマ「佐渡の産業の現状と起業家育成~起業するという生き方~」の資料として2010年までのデータを基に作成したものがあります。その中で少し人口分析もさせてもらい「どれだけの移住があると、どれだけの人口になるか」の目安も「人口再生シミュレーション」ツールで作成しました。
その結果が次のグラフで、その下の表が実数です。

赤い実線グラフは、グラフ表示の次にある「表」の最も下の行であり「毎年男女半々10名のUIターン、夫婦当たり子ども2名」を目標としたものです。その結果は、h27年国勢調査との誤差は0.5%、r2年国勢調査では1%の誤差です。前項に関連づけて言えば「計画なき変革」ではなく、過疎化を止めるにはこれだけの数値が必要ですが、対応するための「一大プロジェクト」に挑戦した結果、「見事、計画どおり進みました」と言ってほしい。最初に必要で十分な条件を明示して、そのゴールから逆算するように、それに対する対応策を検討する。それを誰もができるようにしたい、まず自分で知りたいと思って制作したのが当ツールです。

ただ海士町の場合、移住は10名でよいのに44名ありながら同じような結果になったことの差異分析はしていません。佐渡において500名以上の移住者があったと言われながら統計上は(ここ)のようになっていると同様の何らかの統計上の違いなのかもしれません。

ゴーイングコンサーン

※Going Concern:企業は継続していくという仮説をたて、それを前提にして経営活動や会計を行っていることをいいます。「地域」も同じかなと考え、「経営だったらどうする?」と考えるのが私の視点です。

 

地域のゴーイングコンサーンのために

次の図は、佐渡島を例にした人口ピラミッドです。説明のために20歳毎に世代を分けてみました。この図は、前述「人口の慣性」で「前世代の結果が今日で、今は次世代の因をつくっている」を考えてみると、それは家庭と一緒だな...と思い佐渡全体を家族とみて作成したものです。

左図について次のことを説明します。

①人口減少の原因の96.2%は、高齢世代から順に亡くなったため(ここ)です。

2015-2020年には5823人の人口減少がありました。そのうち5594人は60歳以上の人達が亡くなったためです。通常は同年齢階層で増減をみるのですが、同表では例えば0-4歳の子どもが5年後の5-9歳になったときに何人増減したかでみています。また、表は30歳単位で括ってあります。人口減少の原因は若者流出と言いますが、この計算方法では0-4歳~25-29歳には、新たに出生した1370人が加わるため30名の増加となります。また、30歳~59歳の流出入は安定しているため減少は259名です。

②一方、人口減少対策は、図の「子の代」に焦点をあてたものが殆どです。

図の矢印の囲みに記載したように、UIターン、結婚、出産への対応は「子の代」に対するものです。

ただし、力づくでの対応を行うと、例えば多くの移住?移民?があった場合を計算(ここ)しても、一時的に増加しますが再び消滅に向かいます。人口ピラミッドを改善しないで合併しても両地域とも同じように消滅する関係になります。海士町以外にも「過疎脱却」と言われる地域は多くありました。今は殆どが減少しているでしよう。どこまで続けると脱却できるか不明のまま行っていることと、途中で息切れしてしまうためです。

③地域のゴーイングコンサーン、それは「孫の代」の数とバランスづくりでしょう。

どんなに少なくともよいから、結婚したい人が結婚できて、子どもを二人もちたい夫婦がそのとおりもて、それらが人口減少とは関係ない島外に販売先をもつ企業からの雇用と所得で成り立つコアづくり。そこから考えたり始めるべきと考えます。後は、力に応じて人口の積み上げです。

以上から、全体の減少数を中心にするのではなく、②に対する挑戦結果と評価を前面に出す方がよいのではないだろうか!?

企業を例に説明すれば、売上減少が続き新製品を売り出そうと努力している場合に似ていると思います。仮に新製品が売れ始めたとしても、全体の売上減少と新製品の伸びが交差するまでは減少が続きます。企業の場合、売上減少が続く過程を嘆くよりも、新製品の伸びに対する挑戦と喜びの声の方が高くなると思います。そして更なる挑戦への意欲も高まるでしよう。そして社長は、全体の減少は続くが新製品の伸びは順調なので何年には減少が止まる….と株主総会で説明するでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 Comments

  1. 野口忍 より:

    おっしゃる通りです。年寄りの自然減に対し移住者はある程度の人数がいても、男性の60歳以上とか子供の出産年齢を過ぎた方々だけだとなかなかです。海士町のように中高校生の移住者は将来性が高いですから「どちらか」は酷ですがその点は明らかにこの分析が示しています。細かな説明が欲しいですね。

    • gkmyhn より:

      そうですね。私は、もっと人口への考え方、捉え方が多様であってよいと思います。例えば、佐渡島を例にすれば、40年後に33千人程度を確保したいとあります。40年後ですから25837人いる60歳以上の方は殆ど亡くなります。ということは、59歳以下の25512人に7488人増やして33000人にするわけです。出産は今の低い出生率でも約5075人ほどですので残りは、40年間で2413人を増加させればよいわけです。

      ここに流出入が絡んでくるので、そう簡単にはいきませんが、この流れの中から出るのは挑戦とかアイデアなど前向きなものです。ところが、人口ビジョンの内容は、「国の長期ビジョンからも、人口減少を増加に転じさせることはもとより、これに歯止めをかけることも極めて困難な課題であります」に代表されるような悲痛なイメージしか伝わってきません。

      それは本当のことなんですね。だから責任ある立場の方々から言えば、こうなるのでしょう。ただ、2015年から2020年までの減少数5823人のうち5594人までは高齢者が亡くなった等によるものです。いろいろな切り口から多様な考えがあるとよいと思います。

      人口減少は太刀打ちできないほど凄いものだぞ!…と思いこませ、できれば戦わずして勝つ強者の戦略にはまってしまった感があります。それに対して、ここは私たちの方が上だと絞り込んだ部分で勝ちパターンをつくるのが弱者の戦略でしょう。それが、まだまだ出てよいような気がします。勉強しなさいがお母さんの強者の戦略で、子どもが国語は100点とったよ...と的を外して口答えするのが弱者の戦略ですよね。

      PS
      数字は、年齢不詳者の扱い方などから公のものと異なる部分もあります。

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